Research

リラクタンス型ベアリングレスバーニアモータの開発

    概要

     これまでに,モータの機械的な摩擦による問題の改善方法として,回転子を磁気浮上させる磁気浮上モータの一種であるベアリングレスモータが提案されていた。このモータは無潤滑・無発塵でありメンテナンスフリーである。しかし,ベアリングレスモータは機械的なギヤを用いることができず,高トルクを実現することが難しいという問題がある。この問題の解決方法として,当研究室では構造的に低速高トルク駆動に適したバーニアモータに着目しベアリングレス化することで,非接触かつ低速高トルク駆動が可能なベアリングレスバーニアモータの開発を行っている。


    駆動原理

     バーニアモータは同期モータの一種であり,低速高トルク駆動に適したモータである。固定子にはpm極の三相巻線とZS個の歯,回転子にはZR個の歯を備えており,これらの極数と歯数が特定の組み合わせになるよう設計される。 固定子側の回転磁界が時計方向に固定子スロットピッチであるθ1回転したとき,回転子は反時計方向に回転子歯のピッチと固定子スロットピッチの差であるΔθ2回転する。これにより,回転子の回転速度は回転磁界の回転速度に対してpm/ZR倍に減速される。つまり,ZR/ pmのギヤを付けた場合と同じ減速の効果を得られ,低速高トルク駆動が可能となる。


    浮上原理

     ベアリングレスモータの軸支持力は,電動機を回転させるための励磁磁束と,軸支持力を発生させるための軸支持磁束が相互に干渉することで発生する。固定子側の電動機巻線に電流を流すと赤い点線の矢印で示した励磁磁束が発生する。この時,回転子は上下左右の4方向に同じ大きさの電磁力で引き付けられ,つり合った状態となる。そして,軸支持巻線に電流を流すことで青い矢印で示した軸支持磁束が発生する。この時,励磁磁束と軸支持磁束が互いに干渉することで,下側の空隙では磁束の方向が逆であるので磁束密度が低くなる。一方上側の空隙では磁束の方向が同じであるので磁束密度が高くなる。これにより回転子には上方向に電磁力が作用する。


    試作機による原理検証

     提案モータの原理検証を行うべく,試作機・試験装置が設計・製作された。トルクの測定といったモータにおける基本的な特性から,ベアリングレスモータ特有の磁気支持力の測定も行い,提案モータの性能評価を行っている。