Research

半導体封止材料用の熱硬化性樹脂の適用性評価

    概要

     モータの高効率駆動にはインバータ回路を用いたPWM 制御が有効であり,特に電気自動車や鉄道車両などに用いられるような、高出力なモータの駆動には欠かすことのできない技術となっている.インバータの性能は炭化ケイ素 (SiC) や窒化ガリウム(GaN) を用いた新型パワー半導体の登場により,劇的に向上している.しかしながら,それらの新型半導体素子に用いられる絶縁材料については,これらの素子の性能を発揮するための性能向上が遅れており,新型半導体の高い性能を十分に生かすことができていない.すなわち,半導体封止用絶縁材料の性能が向上すれば,インバータ自体の大幅な効率向上につながる可能性があり,現在活発に研究開発が進められている.新しい絶縁材料の設計には,これらの使用環境において、絶縁材料の性能を正しく評価する手法が非常に重要である.そこで,本研究では、パルス静電応力 (Pulsed electroacoustic : PEA) 法を用いた高温空間電荷分布システムを用いて,半導体封止材料として広汎に用いられているエポキシ樹脂のうち,一般的に市販されているタイプと,新たに開発された高耐熱タイプについて,新型半導体素子の動作環境を想定した高温・高電界下における空間電荷分布測定を行ない,空間電荷蓄積挙動から材料の適用性の評価を試みている。


    測定装置

     PEA 法では,電極で挟んだ試料にパルス電界を印加すると,試料内部に蓄積した電荷層にクーロン力が作用して微小変位し,圧力波が発生する.PEA 法による測定システムでは,発生した圧力波が接地電極を伝搬し,圧電素子に到達することで電圧信号に変換され,オシロスコープにより計測される.オシロスコープにより取得された電圧信号は信号処理を行うことで,空間電荷分布を得ることができる.従来,本研究室で実施していた高温測定では,PEA 装置の高電圧電極ユニットにバンドヒータを設置し,シリコーンオイルを介して試料を加熱することで,試料温度を上昇させ,高温下における空間電荷分布を計測してきたが,その測定可能温度は,高温でも使用できるといわれている圧電センサであるP(VDF / TrFE) フィルムを用いても,80 ℃ 程度までであった.そこで,センサ周りに水冷式 (循環式) の冷却装置を設置することで,150 ℃程度まで測定可能な装置を開発した