Research

モータ巻線用の絶縁材料の評価

    概要

     電気自動車の普及にともない,今後ますますモータのコンパクト化,高効率化が求められるが,その際に,モータ巻線の被覆絶縁材料には,比較的高温下で,高電圧の矩形波が印加され,部分放電(Partial discharge)を引き起こす原因となる。この部分放電の発生機構に,固体絶縁体内に蓄積する空間電荷が関与するとの指摘があるものの,具体的な調査はあまり行われていない。本研究では,モータ巻線の被覆用絶縁材料として実際に使用されているポリアミドイミド(Polyamide-imide : PAI)およびポリイミド(Polyimide : PI)等の空間電荷分布特性を調査するとともに,固体絶縁体に空隙を介して高電圧を印加することにより絶縁体内部に蓄積する空間電荷分布の計測を試みている。また,モータ巻線では,一般的に矩形波電圧が印加されるため,矩形波電圧下でのモータ巻線の絶縁層に空間電荷蓄積特性を調査,さらに,PDIV の変化に対する空間電荷の蓄積の影響を調査するために,実際の巻線の絶縁材料に直流電圧をあらかじめ印加して空間電荷を蓄積させ,そののち,繰り返し印加される矩形波電圧の下で,部分放電開始電圧(PartialDischarge Inception Voltage : PDIV)を測定している。


    駆動原理

     PDIV 装置の概略図を示す。ツイストペア試料によるPDIV の測定は,空間電荷の蓄積が顕微に確認された高温下で行なうために,80 ℃に設定した恒温槽内で行う。ツイストペア状に加工したエナメル線を恒温槽内に設置後,ツイストペアの一方を高電圧電源に接続し,他方を接地して、ツイストペア間のエアギャップ部分で発生するPD を観測する。PD センサには,接地したケーブル部に高周波CT(Current transfer)を取り付けた他,恒温槽の外側のガラス窓近くにも、自作のループセンサを設置して,これらの出力をモニタリングすることで部分放電発生を確認する。なお,信号取得に当たっては,高帯域フィルタ(遮断周波数:400 Hz)を介すことにより低周波雑音を信号より排除して,PD のみによる信号をDSO で取得する。